こころひとつ。39

なにがどうなって

こうなってしまったのか。

翔くんの手が背中に。

長い列を少しづつ進むたびに

翔くんが背中を押してくれる。

背中から熱が全身に伝わって

変な汗が出る。

翔くん、潤も子供じゃないから。

松本、ほんと平気?

うん、

智が言ってくれて

翔くんの腕を俺の背中から離れた。

離れた瞬間、

力の入っていた肩の力が抜けて

こっそり息を吐く。

潤、小銭いっぱい持ってきた??

智がいつもの笑顔で

俺の顔を覗き込む。

うん。

返事した俺に

智は優しい顔で笑顔のまま頷いた。

手を合わせて願う。

この気持ちがバレずに卒業しても

仲良くできますように。

松本、ちゃんとお願いした?

翔くんに言われてうん。と返事をする。受かるように、ではないけど。

俺は受験じゃないこと願っちゃったよ。

え?

えぇ〜俺、翔くんと潤のことお願いしたのに?本人がお願いしてねーこと俺お願いしたのー?

ははっ!ありがと、智くん。あとは智くんの御守りと自分の努力で補うよ。

なにを翔くんはお願いしたの?

この時期に受験生が合格祈願以外に

神様にお願いすることって

何があるんだろう。

って俺も全然違うこと

お願いしちゃったけど。

でも俺とは翔くんは違うもん。

それ言っちゃう?言っちゃうと叶わないって言うしなぁ。

え、マジ?今俺2人の受験のお願いしたってめっちゃ言っちゃったじゃん!手ェ合わす前から潤のことお願いする!って宣言してたし。

ほんとだ!じゃあ智御守りに縋るよ!智、安心して。

はははっ!!努力でカバーはしねーんだ。

だって俺は翔くんみたく賢くないもん。

努力は必ず報われるとは俺も思ってないけど、無駄にはならねーんじゃねーの?

翔くんが何気なく言ったそれは

俺には勉強のことじゃなくて、

俺の気持ちにも当てはめていいのかな

なんて思ってしまう。

報われる気持ちじゃなくても

この気持ちは無駄じゃないのかな。

ー潤くんにとっては

大事なことなんでしょ。

せんせーが言ってくれた。

変なことじゃない。

でもこの気持ちを努力するってなんなんだろう。

隠し続けて友達を続けること?

そんなことで頭がいっぱいになっていると視線を感じる。

智が俺を見つめていた。

潤、努力がもし報われなくても俺がいんぞ。

受験に落ちても智が慰めてくれるの?

それが全てじゃねーだろ?ま、頑張れ。

智の受験が全てじゃない、その受験以外のなにを言ってるのか、もしかして

俺の気持ちを?

ま、あと少し!頑張ろうぜ。

肩を触れる翔くんに

俺は曖昧な返事しかできなかった。

2人で翔くんを見送る。

今日が唯一の休みらしい翔くんは親戚の家に新年の挨拶巡りするんだと帰っていった。

翔くんの背中を見つめたまま

智が言った。

潤。こんな正月に、こんな受験前の時期に話すことじゃないならハッキリ言ってくれ。

智。

智はもう気付いてる。

俺の気持ち。

でも智の顔は

嫌悪感を含むようなものではなくて。

智、聞いてくれる?

聞きたーい。ドーナッツ。

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